東京高等裁判所 昭和30年(う)2638号 判決
被告人 野口道次 外二名
〔抄 録〕
一、被告人野口の弁護人Mの控訴趣意第三点の(三)中原判決の理由くいちがいの主張点、同第四点および第五点について。
原判決は、その事実摘示の冒頭において、被告人白川は予て前橋戦災復興事務所移転課に勤務し、都市計画に基く「移転家屋工作物等の調査及び之に対する補償金額の算定等の職務を担当しており、被告人高橋は、同課長として被告人白川等の職務を指揮監督していたものとしながら、原判示第一の(二)および(三)において、被告人野口が、被告人白川よりは「都市計画に基く家屋工作物の移転補償費及びその内釈の内示、補償費の増額等」につき、又、被告人高橋よりは、右「補償費の増額等」につき夫々便宜な取扱を受けたこと及び将来も受けたいとの謝礼として被告人白川および同高橋に金品供与等の所為に及んだ旨摘示していること而して右「補償金」は当時補償審査会が(旧)特別都市計画法第一七条等によつて之を決定する権限を有したことは、孰れも所論のとおりである。
然し、被告人高橋は右移転課長として、又、被告人白川は同課員として、「補償金額の算定」等の職務を担当していたのであるから、同補償金の決定の前後において右両被告人等の執務上必要にして公正を害しない限りは補償費の額および内訳の内示ならびに予定的原案作成の際の額の増加等も、やはり右職務に包含される行為とみるを相当とする。従つて、原判決において所論の如き摘示をしていることについては、之によつて判決としての理由に前後くいちがいもなく又事実誤認をなしているものでもない。論旨は孰れも理由がない。
(久礼田 武田 石井文)